技術レポート (Vol.67 2026-2)

建築鉄骨梁溶接向けの新しい自動化システムとCADデータ連係ソフトウェアの紹介


藤本 泰成 (株)神戸製鋼所 溶接事業部門 技術センター 溶接システム部

1. はじめに

1.1. 概要

当社は、建築鉄骨梁溶接において、本溶接前の組立工程を自動化する「鉄骨梁組立・本溶接ロボットシステム」と、CADデータと連係して溶接情報を自動生成するソフトウェア「SMART TEACHING™」を新たに開発した。本稿では本システムおよびソフトウェアの特長について紹介する1)


1.2. 背景

建築鉄骨向け溶接の自動化は、これまで溶接時間が長く、アーク発生率の高いコラム構造の部材への適用が中心であり、鉄骨柱が主な対象となっていた。しかし、現在では作業者の高齢化が進行しており、今後さらに鉄骨ファブリケータにおける人手不足が懸念される。さらに、2024年からは労働時間の上限規制が適用され、従来の生産能力を維持することも難しくなってきている2)

こうした背景から、鉄骨ファブリケータでは、これまで人手に依存していた作業領域においても、自動化の導入が一層進むと見込まれている。とくに鉄骨梁は、鉄骨柱と比較して溶接時間が短いにもかかわらず、部品形状の多様性や自動化の難易度の高さといった要因から、溶接の自動化が進みにくい状況にあった。そのため、近年では鉄骨梁向けの溶接自動化システムに対する需要が高まっている。

さらに、建設業界ではデジタルトランスフォーメーション(DX) を推進しており、生産性の向上を目的に建築物の3Dモデルを活用したBIM(Building Information Modeling)の導入が進められている。BIMの概念を持つ鉄骨設計CADの導入により、設計から施工までの一貫したデータ管理が可能となり、各工程でのミス低減や業務の効率化が期待される。

これらの背景から、鉄骨設計CADデータと連係するSMART TEACHING™ と鉄骨梁組立・本溶接ロボットシステムを開発した。これにより、施工の効率化と品質の向上が図られ、システムを導入した鉄骨ファブリケータにおける生産性の向上および競争力の強化が見込まれる。


1.3. 当社従来ラインナップ

当社では、梁を対象とした天吊梁溶接ロボットシステムを販売している(図1)。このシステムは本溶接を自動化するシステムであり、ポジショナに搭載可能なワークは、梁成最大1,200mm、フランジ幅最大400mmである。ただし、梁フランジ×スチフナーを溶接する際は梁成800mmまでに制限される。搭載可能な最大重量はシステム仕様により異なり、3,000kg、および5,000kgのシステムをランナップしている。

図1 天吊梁溶接ロボットシステム


2. 組立溶接施工における課題と、開発したシステムおよびソフトウェアの概要

鉄骨構造では、 H形鋼やコラム形鋼の梁・柱といった主材には、さまざまな部材が取り付けられる。これらの部材は、主材の補強や主材同士および床などの構造物との接合を目的として配置される。図2に従来の組立工程の概略を示す。部材の組立工程では、作業者が図面から各部材の取り付け位置を読み取り、指定の位置に部材を位置合わせして組立溶接を行っているが、多くの課題がある。まず、図面から正確に寸法を読み取り、指定の位置に部材を位置合わせする工程は高度な技能が必要であり、これにより作業できる人員の確保が困難になっている。さらに、寸法の読み取り間違いや位置合わせの精度が低い場合、本溶接時や建設現場での組立実施時に手直しの発生など悪影響を及ぼすことが懸念される。

図2 組立工程の概略


これらの課題解決を目的に開発されたのが本システムである。システムの外観を図3に示す。本システムは、部材識別装置、ハンドリングロボットおよびその移動装置、反転式ポジショナ、溶接ロボットおよびその移動装置によって構成される。また鉄骨設計CADと連係するソフトウェア「SMART TEACHING™」をインストールしたPCを含む。

図3 鉄骨梁組立・本溶接ロボットシステム


本システムでの作業および動作の流れと各装置の役割は以下のとおりである。まず作業者が、 SMART TEACHING™によりCADデータから組立溶接に必要な情報を作成し、各装置に入力する。その後作業者は、反転式ポジショナヘの主材搭載と部材識別装置への部材の配置を行い、 自動運転を開始する。自動運転中、部材識別装置が部材の形状判定を行い、部材の組立可否判定や位置認識を行う。そして、部材を把持するツールを備えたハンドリングロボットが部材識別装置から部材を取り出し、各部材の位置決め位置まで移動して反転式ポジショナ上の主材に部材を位置決めする。ハンドリングロボットはツール交換機能を備えており、さまざまな形状の部材に対応可能である。ハンドリングロボットによる部材の位置決め完了後、溶接ロボットにより組立溶接を行う。前述の部材識別、部材位置決め、組立溶接を繰り返すことで部材の組立を行っていく。主材の裏側など別の面に組立を行う場合は、反転式ポジショナにより主材の姿勢変更を行う。これらの動作による部材組立の完了後、溶接ロボットと反転式ポジショナにより本溶接が行われる。

本システムの特長は、鉄骨設計CADデータを基に、組立工程と本溶接工程の溶接データやシステム動作プログラムを自動で作成し、工程を自動化できることである。次章以降において、 SMART TEACHING™ およびそれぞれの装置の詳細について述べる。


3. CAD連係ソフトウェアSMART TEACHING™の特長と運用について

従来の鉄骨溶接システムにおいては、オペレータがワーク寸法や溶接情報を図面から抽出、また必要に応じワークの実測を行い、システムのソフトウェアに手作業で入力を行う。これに対し、SMART TEACHING™ では鉄骨設計CADデータと連係する機能を備え、CADデータから組立・溶接に必要な情報を自動で取得する。これにより、オペレータの入力作業の省略に加え、入力ミス防止にもつながる。SMART TEACHING™ は事務所と現場でそれぞれ運用する。

事務所での運用を図4に示す。事務所においては、まずは取り付ける部材やシステムの稼働時間などを考慮し、自動化の範囲を判断する。システムで組立・溶接を行うと判断した場合、建物一棟分の情報を含んだCADデータであるIFCファイルを読み込ませることで、SMART TEACHING™が溶接対象の主材ごとにSTファイルを自動生成する。STファイルとは当社独自のファイルであり、一本の主材と溶接対象部材の寸法情報が含まれたXML形式のファイルである。またSTファイルが用意できない場合は、BIMソフトウェアから主材一本分の設計情報をIFCファイルとして書き出すことでも対応できる。このように作成したSTファイルやIFCファイルをUSBあるいはLAN経由で現場PCに送り、事務所での事前準備が完了する。

図4 事務所でのCAD連係ソフトウェアの運用について


つぎに、現場での運用を図5に示す。現場では事務所で作成した主材一本分のSTファイルまたはIFCファイルをSMART TEACHING™に読み込ませると、主材のビューワとともに主材番号や部材サイズ・形状、脚長や溶接残し長さなどの溶接情報が現場PCの画面上で確認でき、実ワークとの比較が可能である。必要に応じて部材の追加・削除・編集も可能である。このように、現場で実物とシステム上のデータを照合することで、溶接ミスや認識違いによる機器の破損を未然に防ぐことができる。オペレータは問題ないことを確認した後、生成した動作プログラムを溶接ロボットに送信し、自動溶接を開始する。

図5 現場でのCAD連係ソフトの運用について


4. 鉄骨梁組立・本溶接ロボットシステムの各装置の特長

組立の自動化を目的として新たに開発したアイテム、技術を以下に紹介する。

部材の自動組立において、さまざまな形状の部材やその取付方法に対応するため、ハンドリングロボット用に複数のハンドリングツールを開発した。一つは、スチフナーやガセットプレートを把持するマグネット吸着式のツール、 もう一つは直動機構や近接センサなどを駆使し、貰通孔を補強する大小さまざまなリング部材の把持が可能なツールである。

部材識別装置(図6) は、部材を並べるパレット部と、部材形状を計測する機構で構成されている。計測機構にはプロファイルセンサと呼ばれる計測器が備わっており、対象物の高さを3次元的に計測でき、その計測分解能は0.1mmである。このセンサを、スライド機構を持った門型装置に搭載し、パレット上を高精度に移動させることで、部材の厚みも含めた形状データを取得する。取得した正確な形状データにより、主材への組立可否判断や、部材を把持するためのハンドリングロボットの位置決め位置の算出を行っており、総合誤差±1.0mmの位置決めを達成している。

図6 部材識別装置


本システムでは、溶接ロボットの移動装置と、ワーク搭載用のポジショナについても開発を行った。移動装置は3軸動作が可能な天吊型を採用している。トーチケーブルをロボット旋回部に内蔵することで、装置やワークとの干渉を減らし適用性を向上した。

ポジショナは最大8,000kgのH形鋼ワークを搭載できる反転式ポジショナ(図7) を開発した。

図7 反転式ポジショナ


反転式ポジショナは、油圧駆動の二対のアームを連動させて主材を反転させる。適用可能な梁成は最大1,200mmであり、当社従来製品のリング式ポジショナの最大1,000mmよりも大きなサイズのワークも搭載可能とした。また、反転式ポジショナの最大の特長として適用性が高いことが挙げられる。反転式ポジショナは主材を下から支持する構造を採用しており、主材把持機構との干渉によって生じていた部材の適用除外という課題を解決した。下から支持する構造としたため、主材を把持する作業もなくなり、省力化および生産効率向上にも貢献している。


5. 組立溶接施工による施工対象の拡大

当社はこれまで本溶接の能率向上、品質向上を目指し溶接施工技術の開発に取り組んできた。本システムの開発においては、本溶接とは施工技術が異なる組立溶接のロボット施工にも取り組み、技術を確立した。

梁に溶接される部材は多品種で、サイズや形状も多様である。それらに対し、さまざまな組立溶接技術を確立した。組立溶接においても、水平溶接姿勢に加え、立向溶接姿勢でもJASS6で指定されている脚長やビード長さを満たした組立溶接を実現した(図8a、図8b)。さらに、本システムでは反転式ポジショナと天吊型移動装置を組み合わせることで、 当社従来製品ではこれまで対応できていなかったOSリング(岡部(株))のようなリング部材の溶接も可能となった(図8a、 図8c、図8d)。

(a) ワークの3Dモデル
(b) ウェブとスチフナー組立溶接
(c) OSリングとウェブ組立溶接
(d) OSリングとウェブ本溶接
図8 溶接の外観


6. システムの導入効果

本システムは、国内で自動化が進んでいない鉄骨梁組立工程を含めた自動化を実現し、鉄骨ファブリケータのさまざまな課題の解決が期待される。

まず、人手不足の解消と生産性の向上が挙げられる。ロボットによる自動化により、組立工程の省人化が図られ、人手不足を緩和する。また、 自動化により組立作業や溶接技術の技能レス化が進むことで、熟練溶接士不足の課題も解決される。さらに自動化システムは24時間稼働可能となるため、 生産性が大幅に向上する。

つぎに、製造品質の向上である。ロボット化により組立作業や溶接作業について高度な技術を持つ熟練溶接士がいなくても高品質な製品製造が可能となる。加えてCADデータと連係したことにより、オペレータの入力作業省略による製作ミスが減少し、歩留まり向上も期待できる。

また、本システムにおいて推奨されるMX-Z200MPを使用することでより良好なスラグ密着性と光沢のあるビードが得られ、梁溶接に多いすみ肉溶接に対して品質の高い継ぎ手を得ることができる。また、後工程の作業面では発生するスパッタの量が減少するため、清掃や仕上げ作業の手間が省け、作業時間の短縮によるコスト削減も期待できる。

最後に、安全性や作業環境の向上である。大型の製品ヘ部材を取り付ける場合でもクレーンレスでの製造が可能となり作業環境が安全に保たれる。作業者の安全が確保されることで事故のリスクは低減する。ロボットによる自動化が進むことで、作業者の負担を軽減することが可能となる。

総じて、本システムの導入により、鉄骨ファブリケータが抱える人手不足や生産性向上の課題を解決することが可能となる。省力化省人化、安全作業、製作期間の短縮、技能レス化、そしてCAD連係による一貫したプロセスの実現により、効率的で高品質な製作を実現する。本システムの導入により、企業の競争力が向上し、持続的な成長が期待できる。

なお、本システムの構成要素のうち、ハンドリングロボットおよび部材識別装置を除き、本溶接のみを自動化する最大ワーク重量8,000kg対応の梁本溶接システムも当社ラインナップに追加しており、すでに複数社で導入いただき、生産性向上に寄与している(図9)。

図9 鉄骨大型梁溶接ロボットシステム
鉄骨大型梁溶接ロボットシステム_YouTube動画


7. まとめ

本稿では、SMART TEACHING™ および鉄骨梁組立溶接システムの技術・特長について紹介した。現在は、適用可能部材の拡大や主材や部材の搬送自動化などに取り組んでおり、さらなる適用率拡大や溶接前工程自動化を実現する。

今後も、溶接技術向上や溶接前後工程の自動化技術開発により、ユーザの自動化ニーズを満たす商品を開発していく所存である。

【参考文献】

1) 鹿勇気ほか, 建築鉄骨梁溶接向けの新しい自動化システムとCADデータ連係ソフトウェアの紹介

2) 池田雄一ほか, 大林組技術研究所報2023、No.87



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