鉄骨業界では建築物件によって、AW検定資格が要求されています。AW検定は建築鉄骨溶接に特化した資格であり、資格保持者の需要が高まっています。
すでにご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、AW検定試験合理化の取組みとして、第41次検定試験から3点の変更があります。変更の詳細内容についてはAW検定協会のホームページでご確認いただきたいと思います。ここではお問い合わせが多いA種すみ肉溶接の変更点と溶接のポイントをご説明したいと思います。
A種すみ肉溶接試験について、試験体の形状および脚長判定基準が以下のとおりの変更となります。
・上板の板厚を9mmから12mmに変更(下板は従来と同じ)。
・上板同士のすき間(ルート間隔)を25mm±1.0mmから27mm±1.0mmに変更。
・脚長の合格範囲を、最小脚長5.5mm最大脚長8.5mmから最小脚長5.5mm最大脚長9.5mmに変更。
・ 裏曲げ試験片の板厚9mmから10mmに変更。
(図1、図2)
A種すみ肉溶接はWES8101資格(すみ肉溶接技能者の資格認証基準)を取得することで免除されます。事前にWES8101資格を取得されるか、A種すみ肉溶接から受験されるかは時間的な余裕や費用、合格率などを考慮して選択してください。当部署としましては、年間でも開催回数、受験難易度、AW検定試験当日の受講者の負荷軽減を加味すると、WES8101を取得してA種すみ肉溶接は免除することをお勧めします。WES8101の詳細はこちらのぼうだよりバックナンバーをご参照ください。
https://www.boudayori-gijutsugaido.com/magazine/vol501/rescue.html
しかしながら、A種すみ肉溶接を受験される方もおられるかと思います。A種すみ肉溶接ではマクロ試験にてルート部の溶込み不良で追試や不合格となる受験者が多いので、ここでは溶接条件などのポイントと施工条件によるマクロ試験の溶込みへの影響を説明します。
・推奨溶接材料: SE-50T
ルート部の溶込みを確保するために、ソリッドワイヤを推奨します。
フラックス入りワイヤはソリッドワイヤに比べて溶込みが浅くなる傾向があり、ルート部の溶込み不良のリスクが高いため、ここでは DW-100Vでの施工例は割愛します。
・推奨溶接電源:デジタルインバータ350A
500Aや600Aの溶接電源では、立向溶接の時に低電流が安定しにくい場合がありますので、使用する場合には事前にアーク安定性をご確認ください。
・溶接条件
水平すみ肉:初期電流180A-22V±1
本電流260A-28V±1
クレータ電流180A-22V±1
立向溶接:本電流120A±10
※適正電圧は使用電源の特性やケーブルの長さによって変動しますので、都度電圧調整をしてください。
・ケガキ線
安定した脚長を確保するため、ルート部から6mm幅でケガキ線を入れることにより、ビード幅の安定性ならびに狙い脚長を確保しやすくなります。
水平すみ肉ではストリンガー法または、脚長の確保をするために、溶接線上に前後のウィービング法を推奨します。(図3、図4)
①角部の回し溶接では角落ちが発生してしまい外観不合格となりやすいため、上記に記載した初期電流(180A)で対処します。角部では直接アークを当てると角落ちやアンダカットとなるので、脚長規定内で大きく外側へ回り込みながらトーチを長手方向側に倒し後進法で溶接します。
②直線部ではマクロ試験や曲げ試験を考慮し本電流(260A)に切替て溶接して、溶込みを確保します。なお、体勢を整えるために棒継部で一度アークを切ります。
③後進角のトーチ角度を維持しやすいように体勢変更して②のクレータ部からビードをつないで、角部手前まで本電流(260A)で溶接をします。体勢を整えることで、溶接線も見えやすくビード外観も安定します。
④角部手前からは①と同様の理由で、クレータ電流(180A)で溶接をします。
⑤②,③は溶込みが深い後進法で後進角は10 ~ 20°ほどでの溶接を推奨します。前進法では溶融池上にアークが発生するため溶込みが浅くなる傾向があり、ルート部の溶込み不良のリスクが高まります。
立向すみ肉では脚長確保するため、ウィービング法を推奨しますが、鉄骨溶接では立向姿勢が少なく、水平より難易度が高いと思われますので十分な練習が必要です。
突出し長さはやや短く10 ~15mm程度、トーチ角度は5 ~ 10°ほど上向で、左右どちらかに傾かないようご注意ください。
立向溶接でのストリンガー法ではビードが凸形状になりやすく綺麗に整いにくいため、ウィービング法を行い平らなビード形状を形成させます。立向溶接のウィービング法には、主に円弧・デルタ・矢じりのウィービング法があります。円弧ウィービング法で溶接してしまうと溶融池上にアークが発生するため、ルート部の溶込み不良が起こりやすくなります。デルタや矢じりウィービング法は母材ルート部に直接アークを発生させるため、溶込み深さを確保しやすく溶込み不良のリスクが低減されます。(図5)
水平すみ肉溶接では溶接電流とトーチ角度の違いで、どの程度溶込み深さが変化するかの検証を実施しました。溶接電流では240A以上の場合は溶込み深さが確保され、ルート部も問題なく溶込んでいます。220A以下になると溶込みが浅くなり、ルート部の溶込み不良の可能性が高まります。マクロ試験結果から溶込み深さと脚長確保を考慮して260A以上を推奨します。(図6)
立向すみ肉溶接ではウィービング法の違いでの溶込み深さの検証を実施しました。円弧ウィービング法は母材ルート部にアークを当てにくいため、ルート部の溶込み不良が発生しています。デルタ状や矢じり状ウィービング法では母材ルート部にアークを当てやすいため、ルート部の溶込みを確保することができます。(図7)
昔に比べて、AW検定資格保有者の必要性が高くなっておりますが難しい試験です。
コベルコ溶接テクノ(株)では、工場溶接の対策講習を講師派遣対応にて行っております。その他にも溶接に関する試験・調査などご興味がありましたら、当社ホームページをご覧いただけると幸いです。
コベルコ溶接テクノ(株)
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