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新人営業マンのための溶接基礎講座

第14回 『低合金耐熱鋼の溶接』

第14回目は、「低合金耐熱鋼の溶接」について解説をいたします。




はじめに

低合金耐熱鋼は主に石油精製、火力発電、原子力発電などの圧力容器に使用される鋼材で高温あるいは高圧部材として使用されています。これらの機器や構造物は、400~600℃の高温で使用されており、最低でも10年以上の寿命が求められます。したがって、使用される鋼材には、長時間にわたる高温・高圧環境下での強度に加え、水素による剥離や割れ、さらには硫酸などによる厳しい腐食環境に耐えうる性能が求められる場合があります。

火力発電所で使用されているボイラなどの圧力容器用として、60年ほど前から低合金耐熱鋼が使用されるようになりました。

適用の一例として写真1は、原油からガソリンや灯油、軽油を抽出するプラントで使用される反応塔(リアクタ)です。

写真1 石油精製リアクタ


1. 低合金耐熱鋼の特性

低合金耐熱鋼は高温度、高圧力下で使用されるため、高温強度、耐食性、耐酸化性が要求されます。そのため、これらの要求を満たすには炭素鋼にマンガン(Mn)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)などの合金元素を含有させ、高温強度やクリープ特性(下記に説明)、耐食性などが向上するように設計されています。図1にクリープ強さに及ぼす合金元素の影響を示します。

低合金耐熱鋼とは、高温で使用される鋼の総称となっています。

代表的な鋼種として、マンガンモリブデン鋼(Mn-Mo鋼)、マンガンモリブデンニッケル鋼(Mn-Mo-Ni鋼)、クロムモリブデン鋼(Cr-Mo鋼)などがあります。


図1 フェライト地のクリープ強さに及ぼす合金元素の影響


1-1. 高強度耐熱鋼

近年、リアクタやボイラの使用条件が高温・高圧化する中で、使用される鋼材にも高強度化が求められるようになっています。高温下での強度保持に加え、長時間の使用において重要となるクリープ破断強度が特に重視されています。

この要求に応えたものが高強度低合金耐熱鋼と呼ばれ、現在では低合金耐熱鋼にバナジウム(V)を添加した鋼が主流となっています。

代表的な鋼としては、ボイラ用9~12%Cr-Mo-Vフェライト系耐熱鋼、リアクタ用2.25%Cr-1%Mo-V鋼などがあります。



《クリープとは》

クリープとはどのような特性なのでしょうか。簡単に説明します。

耐熱鋼の重要な要素であるクリープ特性についてですが、鋼材に力を加えた場合、それが弾性変形の限界点である降伏点応力以下の低い値であっても塑性変形が進行し、場合によっては、破断することがあります。静的な応力の作用下で時間の経過とともに変形が進行する現象をクリープ(Creep)といい、クリープが進行した後の破断をクリープ破断といいます。温度が高くなるほど変形速度(クリープ速度)は早くなります。

リアクタやボイラなどの高温で長時間使用される機器、構造物では重要な問題となります。



クリープは、機器設計の基本となる許容応力を決める重要な要素です。しかし、実際は10万時間のクリープ試験は困難なため、3千~1万時間のデータに多くの試験を重ね合わせて許容応力が設定されています。



2. 低合金耐熱鋼の溶接時の注意点

Mn、Cr、Moなどの合金元素が添加された鋼は、加工や熱などにより自らが硬くなる性質(自硬性)が助長されます。

ボイラやリアクタの製造過程では、鋼板に熱間、冷間による曲げ加工などを行うため、鋼板が硬くなります。

さらに溶接においても、急熱急冷されるため溶接熱影響部が著しく硬化し、場合によっては低温割れが発生する危険性もあります。そのために低合金耐熱鋼の溶接では予熱、直後熱、高熱処理が以下の目的で行われます。

①拡散性水素による溶接ビード割れを防止する。

②溶接部に粘り強さを与え、溶接部の残留応力を緩和させる。

③急熱急冷による溶接熱影響部の硬化を和らげる。

④耐食性、耐酸化性を向上させる。

⑤溶接金属の機械的性質の向上。

※低温割れについては、以下の前回記事もご参考ください。

溶接基礎講座 第13回「中・高炭素鋼および低合金特殊鋼の溶接」



溶接前に鋼材を加熱することを「予熱」といい、急冷による硬化を和らげます。溶接直後の溶接部近傍加熱を「直後熱」といい、脱水素の目的で遅れ割れを防止します。熱処理炉を使用して応力除去焼鈍を行うことは「溶接後熱処理(PWHT)」といい、内部応力の除去や機械的性質の改善を目的に行われます。

表1に低合金耐熱鋼の予熱、PWHT温度の目安を示します。



表1 予熱・パス間温度/溶接後熱処理温度の目安


3.溶接材料の選定

低合金耐熱鋼の溶接材料は、溶接される鋼に近い化学成分(共金系)のものを用います。

表2に鋼種別・溶接法別の溶接材料を示します。リアクタや火力発電用ボイラの大型化に伴い、溶接対象となる鋼材の板厚も厚くなり、低合金耐熱鋼の溶接にはサブマージアーク溶接やガスシールドアーク溶接が主流として採用されています。また、溶接施工量の増加に対応するため、「狭開先化」や「自動化」の検討も積極的に進められています。

さらに、小径鋼管の溶接においては、TIG溶接が広く採用されていることも、低合金耐熱鋼溶接の特徴の一つと言えます。

低合金耐熱鋼用溶接材料には、高温強度・クリープ強度のほかに作業性、溶接性も要求されます。

各溶接方法での溶接作業の要点は総合カタログ(赤カタ)にも記載しておりますので参照してください。また、溶材選定につきましては、下記リンク先情報もご参考ください。



リアクタ | KOBELCO 神戸製鋼

ボイラ | KOBELCO 神戸製鋼

技術レポート | vol.501 | ぼうだより技術がいど

技術レポート | vol.487 | ぼうだより技術がいど



溶接施工に際しては十分理解して行う必要がありますので、ご不明な点がありましたら、当社までお問い合わせください。



表2 耐熱鋼と適用材料


※表中の商標を下記のように短縮表記しております。
FAMILIARC™→ [F] TRUSTARC™→ [T]



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