5月8日(木)京都ホテルオークラにて、神溶会全国総会が開催されました。神溶会の会員である商社・地区指定商社の代表、マスコミ各社、当社溶接事業部門幹部のほか総勢約90名が参加いたしました。総会後の懇親会では、旧交を温めるとともに、交流の場としても大変有意義なものとなり終始賑やかな雰囲気の中で閉会となりました。
本日はご多忙の中、『神溶会全国総会』にご参加いただき、誠にありがとうございます。
また平素より、当社の溶接材料ならびに溶接ロボットシステムの拡販、神溶会の諸活動に積極的にご参画いただき、高い席からではございますが、厚く御礼申し上げます。
はじめにKOBELCOグループについて紹介いたします。
当社グループの中期経営計画では、「稼ぐ力の強化と成長追求」および引き続き「カーボンニュートラルへの挑戦」の 2 点を最重要課題として掲げております。これらの重要課題の達成に必要な「変革」を「KOBELCO-X」と総称し、変革を通じたサステナビリティ経営の強化を図っていきます。
KOBELCOグループ全体では、素材系事業・建設機械での販売数量の減少がある一方で、機械・エンジニアリングにおける受注採算の改善に加え、価格やコストの改善効果を取り込み、昨年度に続いて高い利益水準を確保できる見通しであり、2024年度のグループ連結売上高は2兆5,800億円、連結経常損益は1,400億円を見込んでおります。
当社グループが持つ総合力を活かし、さまざまな個性を持つ人材と多様な技術や事業との『掛け算』により新たな価値を創造し、競争優位性を発揮することで、事業の拡大・発展はもとより、社会への貢献を果たしていきます。
このような中、溶接事業部門におきましては、「品質を経営の柱」とし、「品質・技術」「信頼・安心」「誇り・責任」を基盤に「世界で最も信頼される溶接ソリューション企業」であり続けることを目指しています。
また、溶接を通じ社会に広く貢献し、「いかなる事業環境においても安定した収益を確保する」事業体を目指して、社会課題の解決と持続可能な社会の実現に向け挑み続けています。
次に最近のトピックスをご紹介します。
1つ目は、この4月より、大阪・夢洲において2025年大阪・関西万博が開催されています。当社もフューチャーライフゾーンにある「未来の都市」パビリオンに出展しております。当社ブースは「象徴」「リアル」「ダイナミック」の3つのゾーンで構成されており、未来に進化・発展していく、ものづくり・街づくりを表現しております。
2つ目は、昨年、プレスリリースでもお知らせしたとおり、現在、藤沢事業所の溶接研修センターをリニューアル中です。これまでの溶接に関する知識や溶接技量の習得に加えて、溶接ロボットの講習も実施可能となり、人手不足への対応や人材育成に一層貢献できるものと考えています。今年の秋に竣工の予定ですので、ぜひご期待ください。
米国のトランプ関税など、外部環境は日々激しく変化しています。当社グループとしましては、信頼される技術・製品・サービスを提供し続けるとともに、お客様とのコミュニケーションを大切にし、神溶会の皆様と明るい未来を実現していきたいと願っています。
皆様のご期待にお応えすべく、今後も一層の精進を重ねてまいりますので、引き続きご指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。あわせて、変わらぬご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
最後に、各社様のますますのご繁栄と、本日ご出席の皆様方のご健勝を心よりお祈り申し上げ、私の挨拶とさせていただきます。
株式会社神戸製鋼所
溶接事業部門
マーケティングセンター
国内営業部長
神溶会会長
広崎 成一
平素は神溶会活動に対し、会員の皆様から深いご理解とご協力を賜り、誠にありがとうございます。全国の営業概況を報告させていただきます。
2024年度は働き方改革による実働時間の減少、人手不足による図面・現場工事の遅れ、資機材の高騰により中小物件を中心に計画の見直しや延期が相次ぎ366万㌧という結果となりました。昨年度に引き続き400万㌧割れとなり、厳しい需要環境の1年でした。
2025年度は秋口以降、首都圏を中心とした大型物件の着工が予定されており、385万㌧程度と微増とみております。
2021年度以降の受注量は10百万総㌧を超えており、大手造船ヤードが撤退した現在の日本国内における建造能力から鑑みますと、非常に高い実績で推移しております。全世界的にも20年を超える老朽船の更新やカーボンニュートラルの環境対応船への置換、コロナによる船腹量の見直しを背景に新造船の受注量が好調であります。
足下、日本の各ヤードでも手持ち工事量を約3年確保しており、工事量も潤沢と言える状況となります。各ヤードではさらなる工事量の確保に向けて、生産性向上や省人化に向けた設備投資を積極的に行っております。2025年度の鋼材加工量は横ばいではあるものの、2030年度に向けて増加基調が見込まれております。
一部完成車メーカの型式認証不正影響により当初計画を大きく下回り、前年度比微減の852万台となりました。米国政府の関税措置影響の不透明感はあるものの、型式認証不正影響は2024年度下期には解消され、堅調な国内販売とバックオーダーに支えられており、2024年度比微増の866万台程度とみております。
業種動向を踏まえた溶接材料総需要の推移です。
造船以外の業種における需要低迷が大きく影響し、2024年度は前年度を下回る209千㌧とみております。2025年度は建築鉄骨にて下期以降の需要回復を期待するものの、ほぼ横ばい程度に留まる見込みです。
一方で、自動車および造船分野においても新たな需要が生まれ始めておりますので、ご紹介いたします。
まずは自動車業界における「低スラグワイヤ」についてです。長期間走行した自動車の足回り部品に錆が発生するケースがあります。これは、足回り部品の溶接部に残ったスラグが電着塗装後に剥離し、その部分を起点に錆が発生することが原因です。こうした課題の解決に向けて、自動車業界では電着塗装性の向上に対するニーズが高まっており、当社ではワイヤの成分を調整した「低スラグワイヤ MIX-1TR」を上市いたしました。輸出を含め、2021年度以降は大きく数量が伸長しており、今後もさらなる市場拡大が期待されます。
続きまして、造船業界です。国際海事機関(IMO)は2050年に海運業界におけるCO2排出量ゼロを宣言しております。CO2を大量に排出する重油炊きから代替燃料の一つとしてLNG燃料へ置き変わっております。LNG燃料タンクには極低温特性に優れた9%Ni鋼が用いられており、至近、各ヤードではLNGタンクを自社で製作する動きが加速されております。当社としては、9% Ni鋼用に最適な溶接材料を揃え、小型可搬型溶接ロボットPORTABLE KI-700もラインナップに加え、9%Ni鋼の需要を取込んでまいります。
鉄鋼原料市況は軟化の様相を呈しておりますが、副原料は高騰や高止まりしていることに加え、設備更新費用や労務費を含んだ加工費、運賃費用などは今後の上昇も不可避な状況にあります。引き続き当社の安定供給を継続していくためにも、神溶会の皆様とともに適正な価格で推移できるよう活動を行ってまいります。
溶接サポーター制度のさらなる活性化を目的に2024年度にサポーター再認証制度を制定し、1,300名超の方に更新いただきました。2025年度はこのサポーターの皆様との巡回による積極的な拡販活動を実践してまいります。
また、新たに「優秀サポーター制度」を新設し、顕著な拡販成果を上げられたサポーター様を、翌年の地区総会にて表彰させていただきます。今後とも、積極的な同行巡回および拡販活動へのご協力をよろしくお願いいたします。
当社は、技術および溶接ワイヤを自動車・二輪業種で広くご活用いただくためにPanasonic CONNECT株式会社様と協業することを決定し、プレス発表いたしました。
一般的なワイヤ送給制御の短絡移行と異なり、プロセスは溶滴移行に慣性力を活用した規則的なドロップ移行を実現し、このプロセスに最適な専用ワイヤを組合せることで自動車業界におけるさまざまな溶接課題を解決してまいります。
プロセスの特長としては、低スパッタ、耐ギャップ性、深溶込み、耐気孔性、100% CO₂、高速溶接性、そして高溶着速度が挙げられます。これらは、自動車業界の溶接において求められるニーズを幅広くカバーしています。さらに、溶接条件の許容範囲が広いことも大きな特長の一つです。
最後に、の展開についてご紹介いたします。昨年秋より、建設機械など中厚板用途向けに、当社の溶接ロボットシステムと溶接ワイヤの組合せで販売を開始しております。今回の発表では、自動車・二輪業種向けに、Panasonic CONNECT様が新たに開発された溶接プロセス「AXEL-AWP4」に適した溶接ワイヤを、当社が開発・販売することとなりました。
当社と神戸製鋼所様とのお付き合いは、当社創業の昭和22年頃にまでさかのぼります。昭和45年頃までは、神鋼棒を月間20トン、他社製溶接棒を月間100トンほど販売しておりました。
転機が訪れましたのは、私がまだ5歳だった昭和45年に発生した台風10号の際でございます。高知市内全域が水没し、当社も全商品が水没するという甚大な被害を受けました。当時は天災に対応する損害保険もなく、困窮していた中、神戸製鋼所様だけが水没した商品の補填をしてくださり、早い段階から復旧のご支援を賜りました。
このご恩に感激した先々代社長は、すべてのお客様を訪問しご説明のうえ、月間100トンの他社製溶接棒をすべて神鋼棒に切り替えました。これが、現在の高知県における神戸製鋼所様の圧倒的なシェアの礎となったと聞いております。
また、先代社長の時代である平成10年に発生した高知豪雨の際にも、本社が再び水没の被害を受けましたが、その際も真っ先にご支援くださったのが神戸製鋼所様でございました。
このような歴史を通じて、私自身も先々代、先代に続き三代にわたり、神戸製鋼所様の大ファンでございます。今後とも、力強いパートナーシップのもと、末永くお取引を賜りますようお願い申し上げます。
最後になりますが、神溶会のますますのご発展と、会員各社様のご繁栄、そして本日ご列席の皆様のご健勝を心よりお祈り申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。